最近感じたユーザーインタフェースのこと

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ユーザーインタフェースというよりマンマシンインタフェース(ヒューマンマシンインタフェース)といった方がいいかも知れない。
何のことかというと、2、3日前に報道されていた『全日空機の急降下事故』。

副操縦士の誤操作が原因ですが、それ以前にスイッチの配置がおかしいような気がする。
もちろん、誤操作などがあってはならないことです。
しかし、プロダクトデザインの経験がある者からすれば、どうもスイッチの配置が納得できない。
工業デザインでたいした実績もない私が偉そうなことをいうのも気が引けますが、今回の事故で感じたことを少しばかり書いてみます。

まず、間違えた2つのスイッチについて。
ひとつは『コックピットのドア開閉スイッチ』
これは、その名の通りドアの開閉スイッチなので、何を作動させるかということに疑問はありません。
もうひとつは『ラダートリムコントロールスイッチ(方向舵のトリムというスイッチ)』
こちらは、『翼についてる小さい羽を微調節するもの』らしい。
これを操作すると左右の翼の揚力に差ができて、操縦桿を左右に動かしたのと同じことになるようです。
何となくわかりますが、正確にはパイロットの人に聞かないとわからない。
また、飛行中にこのスイッチを頻繁に操作することがあるのかということも重要。

上記 pdf のコックピット画像を見る限り、両スイッチは同じダイヤル式ですが、大きさが違います。
なので、この配置だと『これだけ大きさが違うから間違うはずがない』という設計思想で作られているとしか思えません。
両スイッチの用途の違いを考えると、位置も近い気がします。
9.11以前、ドアスイッチはプッシュ式でドアの近くにあったが、9.11以降現在の位置に移動してダイヤル式に変わったらしい。(本当かどうかよくわかりません)
移動した理由は何となくわかりますが、何故その位置にしたのかという理由はわかりません。

『ラダートリムコントロールスイッチ』も飛行中に操作することが少ないのであれば、もう少し手の届かない位置に配置した方がいいのでは?
緊急時、すぐに操作をする必要があるのなら、位置はそのままでカバーを付けるとか…

ちょっと身近な話題でいうと、以前誰かに聞いた話なのか、私が勝手に思い込んでいるだけか忘れましたが、車のライトスイッチの話が参考になるかも知れません。
国産車の多くは、ステアリングコラムに回転式のライトのスイッチが付いています。
しかし、ドイツ車などはダイヤル式のスイッチがダッシュパネルに付いています。
これは考え方の違いで、ヘッドライトというのは常時点灯が常識で、一旦付けると頻繁に触ることが無く、また、誤操作で消えることがあっては危険だという認識から、ちょっと不便と思われる位置に敢て配置しているのだということ。
そして、コラムスイッチは頻繁に操作するスイッチを配置している。
つまり、『ミスを防ぐ』ような設計がされているということ。
ただ、あまり操作することがないと思われるクルーズコントローラーがステアリングコラムにあったりすることもありますが、こちらは緊急時のことを考慮して手元に配置しているのだと思います。
日本の場合は、『手元にあった方が楽でしょ』という観点しかないように感じます。
もし、国産車もコラムスイッチではなくダッシュパネルにライトのスイッチが配置されていたら、交差点に止まる度にライトを消すという習慣はなかったかも…
そういう観点でベンツを見ると「ホントよく考えられているなぁ」と感心することがありますよね。

また、Apple Computer(現在の Apple 社)が、初めて『 Undo 』機能を搭載した理由は『人間は間違いを犯す生き物である』という前提に基づいたものだったと記憶しています。(こちらもはっきりと覚えてないです、ゴメンナサイ…)
Apple Lisa に初めて搭載されたと記憶しているのですが、もしかするとパロアルト研究所の Alto かも知れない。
こちらは『ミスをすることを前提』にした設計だということ。

この2つの例に共通することはやはり『人間は間違える生き物』ということに尽きます。
マンマシンインタフェースにおいて『ヒューマンエラーを起こさせないような対策が必要』ということからすれば、やはり2つのスイッチの配置には納得できない。
ボーイング社ほどの企業が何故あのような配置にしたのか理由を知りたい。
もしかしたら、軍用機だと全然違った配置だったのかも知れない。(軍用機にコックピットドアがあるかどうかは知りませんが…)

ユーザーインタフェースでは使い心地や要求に対する配慮といったユーザビリティも重要ですが、特にマンマシンインタフェースを考える上では『人間は間違える生き物』ということを前提にして設計すべきだと思う。

じゃないとね…

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